好来系という名古屋ラーメン ~さようなら、好好(1)

あまり全国的に知られていないのだが、名古屋には「好来系」というご当地麺がある。
昭和30年代に創業した屋台から始まった「好来」というお店をルーツとするラーメン屋の系統である。

大久手の屋台から始まった「好来」は、紆余曲折を経て現在も千種区春岡の地で「好来道場」という名で続いているが、既に亡くなった創業者の楓氏の元で修行したお店、あるいはそのお弟子さんの店で修行した店(つまりは孫弟子)、レシピを買った店、さらには正式な弟子関係にはないが同様の内容のラーメンを出している店もあり、それらを総じて「好来系」と呼んでいる。

弟子筋の店で現在の代表格となるのは、丼からはメンマしか見えないメンマ山盛りラーメンで全国区テレビにも何度か登場した「好陽軒」であろう。

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好陽軒のスペシャルメンマ

そのメンマ山盛りラーメンはビジュアル的にも強烈なのだが、「好来系」のラーメンの特徴はもっとシンプルだ。

根菜と鶏ガラ豚骨等動物系を煮出したあっさりスープで、別名「薬膳ラーメン」とも呼称されているのだが特に漢方食材とかが使われていることでもなく(卓上に高麗人参酢はあるが)、スープそのものが身体に良いという主張であるようだ。

基本がチャーシュー麺であるというのも特徴のひとつでそこそこ大判のロールチャーシューが四枚(店によって異なる)のる。

そして図太い食べ応えのあるメンマが何本か添えられる。
麺は中太のやや黄色い麺。以前は島田屋製麺という製麺所のものが一括して使われていたが十数年前に廃業してしまったので、各店舗がそれに近い麺をそれぞれ別の製麺所に発注している。

この系統のラーメンの特徴を文章で伝えるとこのようなことになる。ラーメン自体以外の特徴もいろいろあるのだが、長くなるので今回はそれを割愛する。

だが、食べてみるとこの味を食べたことのない人にどのように伝えればいいのかよくわからない。
あっさりはあっさりなのである。醤油が立っているわけでもなければ、煮干しがガツンと来るわけでもない。店によって差はあるけれども、普段味の濃いものを好んで食べている人にとっては「あまり味がしない」と感じることもあるかもしれない。
一度食べただけではその美味しさがわかりにくいラーメンなのだ。

もう一方の名古屋のご当地ラーメンである「台湾ラーメン」とは真逆にあるといってもいい。あのインパクトとはまったく対照的なラーメンなのである。

県外からこの「好来系」のラーメンをわざわざ食べにくる人の話はあまり聞かない。
全国的なラーメン特集でもほとんど取り上げられることはない。
それでも地元では何度もリピートをする人が大勢いる、出来て何十年も経っても固定ファンがしっかり付いているラーメンなのである。

そんな「好来系」のうちの老舗の一店舗が本年中でその長い営業を終えることになった。

『八事らーめん 好好』がその店である。

(つづく)